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ナレンドラ ダモダルダス モディ नरेन्द्र दामोदरदास मोदी Narendra Damodardas Modi 太陽系は約46億年前、銀河系(天の川銀河)の中心から約26,000光年離れた、オリオン腕の中に位置。 18代インド首相 前グジャラート州首相

 


太陽系は約46億年前、銀河系(天の川銀河)の中心から約26,000光年離れた、オリオン腕の中に位置。


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太陽系は約46億年前、銀河系(天の川銀河)の中心から約26,000光年離れた、オリオン腕の中に位置。

太陽系は約46億年前、銀河系(天の川銀河)の中心から約26,000光年離れた、オリオン腕の中に位置。

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バイデン大統領は金でインドの心を買えるか? 駐日インド大使の対中強硬発言とインドの対中露友好

遠藤誉中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
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2017年に北京で開催されたBRICS外相会議(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 駐日インド大使が対中強硬的発言をしているが、インド外相は王毅外相が議長を務めるBRICS外相会議で対中露友好姿勢を表明。対米非難が目立つ。そこへアメリカが大型の対インド軍事支援をすることが判明した。

◆産経新聞が単独取材したバルマ駐日インド大使の発言とその解釈

 5月19日、産経新聞はバルマ駐日インド大使を単独取材し、<バルマ駐日インド大使 中国念頭に「覇権主義に反対」>という見出しで報道した。それによればバルマ大使は概ね以下のように述べたという。

 1.海洋進出を強める中国を念頭に「覇権主義的な動きには反対だ」。

 2.日米豪印4ヵ国協力枠組みクアッドは「軍事同盟ではなく、さまざまな問題を協議する場だ」。

 3.台湾有事が発生した場合の対応を考えるより、有事が起きないようにすることが重要だ。

 4.ロシア制裁に関して「インドは独立した立場を取っている。経済制裁は一般国民に苦痛を与えることになる」と説明。外交と対話による停戦を求めていくべき。(引用ここまで)

 これらに関して筆者なりの解釈を以下に示したい。

 「1」に関して:「海洋進出を強める中国を念頭に」という言葉は、産経新聞の記者の方が位置付けた言葉だろうと考えられ、インドとしては「中国であれアメリカであれ、覇権主義的動きには反対」という立場なのではないかだろうか。

 「2」に関して:インドが軍事的に最も仲が良い国はロシアなので、クワッドが軍事同盟的性格を持っているなら、ロシアと仲が良い中国に対抗するようなグループには入りたくないという意味あいを持つことになろう。

 「3」に関して:5月12日のコラム<ウクライナの次に「餌食」になるのは台湾と日本か?―米政府HPから「台湾独立を支持しない」が消えた!>に書いたように、アメリカ政府は台湾関連のウェブサイトから、ひそやかに「台湾は中国の一部」という言葉と「アメリカは台湾独立を支持しない」という文言を削除している。中国の逆鱗に触れる行動をしているのだ。つまり「台湾有事を発生させるための仕掛け」を始めている。したがって、バルマ大使の「有事が起きないようにする」という言葉はアメリカに向けて言ったものと推測することができる。

 「4」に関して:インドはロシアに対して制裁するどころか、武器はソ連時代からすべてソ連から、そしてソ連崩壊後もロシアから購入してきたので、対ロシア制裁など、インドにとってはとんでもない話だ。アメリカはそれを崩そうと、何年も前から、アメリカの武器を購入し、アメリカ製軍事システムの中に入るようインドを説得してきたが、なかなか実現しなかった(たとえば2007年には民主党のリーバーマン上院議員や米太平洋軍司令官のキーティングがインドを訪問してインドを説得し、同年9月に、日米印豪およびシンガポールとのっ合同海軍演習にせいこうしているがアメリカ製兵器購入にまでは至っていない)。それでも2019年2月15日にトランプ政権で国家安全保障問題担当だったボルトン補佐官がインドのカウンターパートに電話して「インドがパキスタンに一方的に侵攻しても、国連安保理でインドの側に立って、アメリカが拒否権を使ってあげるので、アメリカ製の武器を購入しろ」と執拗に迫って、遂にインドはやむなく一回だけ、アメリカから武器を購入したことはある(詳細は拙著『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』p.188‐192「露印は軍事的緊密事」)。

 しかし、同書のp.191に書いたように、ロシアのウクライナ侵略が始まったあと、アメリカが天然ガスや石油などのエネルギー資源に関して徹底したロシア制裁を呼びかける中、インドはプーチンと仲良く話し合い、ロシアからの原油購入などを増やし、おまけにロシアのルーブルとインドのルピーでの取引を進めている。

 バルマ大使の「インドは独立した立場を取っている」は、まさにこういった「アメリカに同調しない、独立した立場」を指しているとしか解釈のしようがない。

 またバルマ大使の「経済制裁は一般国民に苦痛を与えることになる」という言葉は「アメリカ批難」以外の何ものでもない。

 アメリカはロシアや中国だけでなく、自分の気に入らない国にはすぐに経済制裁を科す。なぜ国連を中心とした国際秩序を、アメリカだけは守らなくていいのか、なぜアメリカだけは自国の利益のために勝手に相手国に制裁を科して、世界経済のサプライチェーンを乱し、地球上のすべての人々に災禍をもたらしても許されるのか。それは誰もが素直に疑問に思うところだろう。

 それは「ドル基軸通貨体制」があるからで、なぜそれが可能かと言えば「ニューヨーク・ウォール街での業務を必須の条件とする大手銀行に、米国の意向に逆らえば銀行の免許没収という脅しを突き付けているからだ」と、杉田弘毅氏が『アメリカの制裁外交』で書いておられる。

 またバルマ大使は「外交と対話による停戦を求めていくべき」と言っているが、これは習近平も言い続けている言葉で、習近平の場合は2月25日にプーチンに直接電話で伝えている。

 つまり、インドの姿勢は中国と同じなのだ。

 逆に「ウクライナ戦争を停戦させたくない」と思っているのはアメリカであることを、世界は知っている。それは4月24日のコラム<「いくつかのNATO国がウクライナ戦争継続を望んでいる」と、停戦仲介国トルコ外相>に書いた通りで、事実その翌日の25日にアメリカのオースティン国防長官がウクライナを訪問した後、ポーランドにおける記者会見で「この戦争はロシアが二度と立ち上がれなくなるのを見届けるまで続ける」という趣旨のことを言っている。

 ということは、バルマ大使のこと言葉も、深く考察すれば、「アメリカを非難した言葉」と解釈することができるのではないだろうか。

◆王毅外相が主催したBRICS外相会談におけるインドの姿勢

 5月19日、議長国中国の王毅外相が主催して、「ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ」の外相がビデオ会議でBRICS外相会議を開催した。そのときに出された共同声明の中の関連項目だけを拾い上げると、以下のようになる。

 一、外相たちは、多国間主義を再確認し、国連憲章の目的と原則を基礎とした国際法を支持する。主権国家が平和を維持するために協力する国際システムにおける国連の中心的役割を支持する(三条関連)。

 二、外相たちは、国連安全保障理事会、国連総会などでウクライナ問題について表明された国別の立場を確認しあった。外相たちはロシアのウクライナとの(停戦)交渉を支持した(十一条関連)。

 三、外相たちは、人権と基本的自由を促進し保護するために、国内においてだけでなく、全世界レベルで各国が全ての人類に対して平等な待遇と相互尊重の原則に基づいて協力し、人類運命共同体を構築すべきであることを再確認した(二十一条関連)。

 四、外相たちはBRCSメンバーを増やしていくことを支持した(二十四条関連)。(以上、共同声明から関連項目の概略を引用)

 そもそもBRICS外相会議にはロシアのラブロフ外相が堂々と参加しているわけだから、ロシアの主張も取り入れていることは明白で、その上で共同声明を出せたというだけで、すでに中国だけでなくインドもまた基本的にロシアに共鳴していることになる。

 軍事攻撃に関しては中国もインドも賛同はしてないだろうが、かと言って、それを激しく非難するということはしていない。その事実を前提として少しだけ解釈を付け加えると以下のようなことが言える。

 「二」に関して:停戦交渉を続けるべきだという点で一致しており、アメリカのように「ロシアがくたばるまで、叩きのめしてやれ」という思惑とは反対側にいる。しかし、私見を述べるならば、軍事侵攻をしているのはロシアなのだから、ロシア自身が侵略行為をやめれば済む話で、ロシア以外のBRICSメンバー国がロシアに対して「侵略をやめろ!」と言うべきだと思うが、それを「言わない」あるいは「言えない」ところに問題があり、「だらしない」としか言いようがない。

 「一と三」に関して:これは「一国一票」の平等性を以て、国連で決めていくべきで、アメリカ一国が他国を制裁したり、「小さなグループ」を作って「第三国を排除する」という排他的論理で行動すべきではない、と主張していることを意味する。中国ではBRICS外相会議に際して、数えきれないほど多くのメッセージが出されているが、たとえば王毅が言った< 「小さなサークル」は世界が直面している「大きな挑戦」を解決できず、「小さなグループ」はこんにち世界が面している「大きな変動する情勢」に適応できない>などに現れている。しかも共同声明で、習近平の外交する―がんである「人類運命共同体」を入れたのは、BRICSメンバー国が、「中国を支持し、中国の外交姿勢に賛同している」ことを意味している。

 「四」に関して:これはBRICS外相会議における王毅の演説の中の一つに表現されている通り、「新興市場や途上国との連帯と協力」を強化していこうという主張で、世界は先進国によってのみ動かされているのではなく、先進国以外の国の数の方が圧倒的に多いので「BRICS+」を増やしていこうという論理に基づいた表現である。

◆インド外交部の発表

 インド外交部は今般のBRICS外相会議に関して以下のような発表をしている

 ――外相たちはウクライナの状況について話し合い、ロシアとウクライナの間の(停戦)交渉を支持した。 外所為たちは、紛争がエネルギー安全保障や食料安全保障に与える影響に懸念を表明した。外相たちは、国際機関および国連とその安全保障理事会を含む多国間フォーラムにおいて、発展途上国がグローバルガバナンスにおいて重要な役割を果たすことができるように、改革を推進し、開発途上国の代表を増やすことを求める声を支持した。(引用ここまで)

 すなわち、インドはアメリカの一極主義と制裁外交に反対しているということになる。

◆アメリカの突然の対インド大型軍事支援

 ところが、アメリカはインドのこの姿勢を変えさせようと、なんとインドに対して5億ドル(640億円)の軍事援助プランを準備していることがわかった。5月18日のインドのHindustan Timesが伝えた。

 どうやらアメリカは、インドのロシアに対する武器依存を減らすために、軍事援助パッケージを準備しているようで、関係者の話によれば、検討中のパッケージには5億ドル相当の軍事支援が含まれているとのこと。取引がいつ発表されるか、どのような武器が含まれるかは、今はまだ不明のようだ。

 この取り組みは、ウクライナ侵略でロシア批判を躊躇しているインドに対して、バイデン大統領がインドを長期的な安全保障パートナーとして培っていこうとする大きなイニシアチブの一環だと、匿名のアメリカ高官が言ったとのことだ。

 あのモディ首相が、「金」で心を動かすか、じっくり観察したいものである。

日中外相テレビ会談内容の日中における発表の差異は何を物語るのか?

遠藤誉中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
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中国の王毅外相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 5月18日、日中外相会談が行われたが、とても同じ会談とは思えないほど、自国に都合のいいことだけを並べており、日中双方で発表内容が大きく異なる。その差異から何が読み取れるか考察してみよう。

◆日本の外務省による発表

 5月18日、午前10時から約70分、林芳正外相と王毅外相がテレビ会談を行った。日本の外務省は、その会談内容に関して林外相が概ね以下のように言ったと発表している。リンク先に日本語があるので、要点のみ略記する。

 1.日中は「建設的かつ安定的な関係」という重要な共通認識を実現していくべき。

 2.日本国内の対中世論は極めて厳しい。互いに言うべきことは言いつつ対話を重ね、協力すべき分野では適切な形で協力を進め、国際社会への責任を共に果たしていくべき。その上で、尖閣諸島を巡る情勢を含む東シナ海、南シナ海、香港、新疆ウイグル自治区等の状況に対する深刻な懸念を表明。台湾海峡の平和と安定の重要性。在中国日本大使館員の一時拘束事案及び中国における邦人拘束事案について。日本産食品に対する輸入規制の早期撤廃を強く求めた。

 3.新型コロナによる様々な影響がある中で、在留邦人の安全の確保や日本企業の正当な経済活動の保護等について中国側の適切な対応を要請。

 4.ウクライナ情勢について、ロシアによるウクライナ侵略は国連憲章を始め国際法の明確な違反であり、中国が国際の平和と安全の維持に責任ある役割を果たすよう求る。北朝鮮については、非核化に向け国際社会が一致して対応する必要がある。拉致問題の即時解決に向けた理解と支持を含める。

◆中国外交部による発表

 一方、中国の場合は二段階に分けて発表し、実に激しい。

 まず18日の14:56の情報として、外交部は「王毅が日米の対中干渉に関して立場を表明した」というタイトルで、以下のように書いている。

 ――2022年5月18日、国務委員兼外相の王毅は、日本の林芳正外相とのビデオ会議で、日米の中国に対する否定的な動きについて立場を示した。

   日本は日米印豪「クワッド」首脳会談を主催しようとしている。警戒すべきは、アメリカの指導者(バイデン)がまだ来日する前から、日米が連携して中国に対抗していこうという論調がすでに悪意に満ちて騒々しく広がっていることだ。

   日米は同盟関係にあるが、日中は平和友好条約を締結している。日米二国間協力は、陣営の対立を扇動したりしてはならないし、中国の主権、安全保障、開発の利益を損ねたりすることなど、さらにあってはならない。日本側が歴史の教訓を学び、地域の平和と安定を目指し、慎重に行動し、他人の火中の栗を拾いに行くようなことをせず、隣国を自国の洪水のはけ口にする(自分の利益を図るために災いを人に押しつける)ような道を歩まないことを願っている。(引用ここまで)

 中国の外交部は、その15分後の15:11に、日中外相テレビ会談の全体に関して、以下のように発表している

 ――王毅は、今年は日中国交正常化50周年であり、二国間関係の発展の歴史において重要な一里塚だと述べた。 両首脳は昨年、新時代の要求に合致した日中関係の構築を促進する上で重要な合意に達した。

   王毅は、目下の急務は、以下の3つのことを成し遂げることだと指摘した。

   一、二国間関係の正しい方向をしっかりと把握すべきである。 中国と日本の4つの政治文書は、二国間関係の平和的、友好的な協力の方向性を定め、両国がパートナーであり、相互に脅威をもたらさないという一連の重要な原則的合意を築いた。 両国の関係が複雑かつ深刻であればあるほど、中国と日本の4つの政治文書の原則の精神を揺るがすことなく、初心を忘れてはならない。 我々は、正しい認識を確立し、積極的に相互作用を行い、国交正常化50周年を計画し、あらゆるレベルの様々な分野での交流と協力を強化し、前向きな世論と社会環境を醸成すべきである。

   二、二国間関係の前進の原動力を十分に満たすべきである。 経済・貿易協力は、二国間関係の「バラスト(船底に置く重り)」と「スクリュー」である。中国が相互循環の新しい開発パターンの構築を加速することは、日本と世界にとってより多くの機会を提供するだろう。双方は、デジタル経済、グリーン低炭素、気候変動管理などの分野で協調と協力を強化し、より高いレベルの相互利益とウィンウィンの状況を達成するために、協力の可能性を深く掘り起こすべきである。

   三、干渉要因を迅速に排除すべきである。 台湾など、中国の核心的利益や主要な懸念に関する最近の日本の否定的な動きは、一部の政治勢力が中国を誹謗し、相互の信頼を著しく損ない、二国間関係の根幹を揺るがしている。 歴史の教訓を忘れるな。日本側は、これまでの約束を守り、両国間の基本的な信義を守り、日中関係を弱体化させようとする勢力を許さず、中国との国交正常化の50年で達成された貴重な成果を維持すべきである。

   林芳正(氏)は、日本と中国は広範な共通の利益を共有しており、協力の大きな可能性と幅広い展望を持っていると述べた。今年は日中外交正常化50周年を迎えるが、両国首脳の重要な合意に基づき、建設的かつ安定的な二国間関係の構築に努めなければならない。日本側は、中国と志を共にして、国交正常化の初心を忘れず、率直な意思疎通を維持し、誤解や誤った判断を軽減し、デリケートな問題には適切に対応して、政治的相互信頼の強化を図りたいと思っている。(中国外交部からの引用はここまで)

 中国の外交部が二つに分けて情報発信したことから読み取れるのは、ともかく一刻も早く「クワッド」に関する王毅の発言を公表したかったことと、これこそが中国側が今現在、最も言いたいことなのだろうということだ。

 日本の外務省の発表とは、何という相違だろう。

 とても、これが同じ会談の内容だとは思えないくらい異なる。

 一致しているのは日本外務省の「1」の部分だけくらいだろうか。

 中国側の発表を見ない限り、いま日中が、どのような関係にあるのかということは見えてこない。

◆中国は数回にわたり北朝鮮に警告している

 もう一つ、注目すべきことがある。

 実は中国は北朝鮮に数回にわたり警告を出していたのだ。

5月11日付の東京新聞は、以下のような報道をしている。

 ――韓国の情報機関・国家情報院トップの朴智元氏が韓国紙のインタビューに明かしたところによると、中国は最近、数回にわたり北朝鮮にICBMの発射や核実験を中断するよう促した。北朝鮮メディアは4日と7日のミサイル発射に言及しておらず、中国に一定の配慮をした可能性もある。

   中国の王岐山国家副主席は10日午後、尹氏(新大統領)と会い「朝鮮半島の非核化と恒久的な平和を推進する」との立場を伝えた。それでも、専門家の間では中国の北朝鮮への影響力にも限界があるとの見方が強い。朴氏は、バイデン米大統領が訪韓する20日までに北朝鮮が核実験に踏み切るとの見方を示している。(東京新聞からの引用はここまで)

 この情報に関して、中国大陸のネットで検索したが、ヒットする情報はなかった。つまり、中国では、「中国が再三にわたり、北朝鮮にICBMの発射や核実験を中断するよう促した」ことに関しては、公表しないようにしているということになる。

 林外相は、この事実を把握した上で発言しているのか否か分からないが、少なくとも王毅外相はこの事実に関して、会談でも何も言わなかったものと推測される。

 5月18日のコラム<中露は軍事同盟国ではなく、ウクライナ戦争以降に関係後退していない>に書いたように、中朝は軍事同盟を結んでおり、北朝鮮の無謀な軍事行動は、中国にとっては「迷惑な行動」で、中国は中朝友好協力相互援助条約を破棄したいと何度か望みながら、結局のところ破棄した場合のディメリットもあり、破棄できずに今日まで至っている。

 それでも北朝鮮が自暴自棄にならないよう、習近平は北への経済的支援を絶やしてない。

 習近平が、ロシアの軍事行動だけでなく、北朝鮮の軍事行動に関しても、何とか抑えたいと相当に窮地に追い込まれていることを、「日本では報道されない中国情報」(および東京新聞の情報)の中に垣間見ることができる。

中露は軍事同盟国ではなく、ウクライナ戦争以降に関係後退していない

遠藤誉中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
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習近平国家主席とプーチン大統領(写真:ロイター/アフロ)

 16日にプーチンが招集した軍事同盟CSTO首脳会談に中国が入っているはずがないし、中露間にも軍事同盟はなく、中国は(北朝鮮以外は)どの国とも軍事同盟を結んでいない。中国は軍事的に中立でNATO結束からも独立している。

◆プーチンが招集した軍事同盟CSTOと中国

 5月16日、プーチン大統領はCSTO(Collective Security Treaty Organization)(集団安全保障条約機構)設立30周年記念にちなんで、関係国首脳をモスクワに呼んで会議を開いた。CSTOはソ連崩壊に伴って1992年5月15日に旧ソ連の構成共和国6ヵ国によって設立された軍事同盟で、設立時から今日に至るまで紆余曲折があるものの、現在のメンバー国は「ロシア、ベラルーシ、アルメニア、 カザフスタン、 キルギス、 タジキスタン」である。

 中国と旧ソ連は、1950年代の後半から関係が険悪化し、1969年には中ソ国境にあるウスリー江の珍宝島(ダマンスキー島)で大規模な軍事衝突が発生し、中ソ国境紛争が始まった。一時は中ソ間で核戦争が勃発するかもしれないというほど険悪な状態になり、これが結果的に米中接近を促したと言っても過言ではないほど、中ソは仲が悪かった。

 もちろん1989年5月、天安門事件が起きる寸前に、まだ「ソ連」だった頃のゴルバチョフ書記長が訪中し中ソ対立に終止符は打った。しかし1989年6月に起きた天安門事件で中国人民解放軍が民主を叫ぶ丸腰の若者たちに発砲して民主化運動を武力で鎮圧したことにより、ソ連崩壊後のロシアは、まだ「中国人民解放軍」に対して十分には警戒を緩めていなかった。

 したがってCSTOは、ある意味、対中警戒的要素を持っているとも言える。

◆中露善隣友好協力条約が締結されたのはプーチンが大統領になってから

 プーチンは、ロシア連邦の第二代大統領(2000年~2008年)と第四代大統領(2012年~現在)を務めているが、中国とロシアの間の「中露善隣友好協力条約」が締結されたのは、プーチン政権になったあとの2001年7月16日のことだ。

 旧ソ連との間には1950年に中ソ友好同盟相互援助条約が結ばれており、それは軍事同盟でもあれば経済協力に関する条約でもあったが、1980年に失効している。

 ソ連崩壊後は上述の軍事同盟が旧ソ連の構成共和国の間で結ばれたくらいだから、中国との間の「中露善隣友好協力条約」に軍事同盟の要素があるはずがない。

 日本では、「中露善隣友好協力条約」の第九条が事実上の防衛協定だという人もいるが、そういう事実はない。第九条には以下のように書いてあるだけだ。

 第九条:締約国の一方が、平和が脅かされ、安全保障上の利益や締約国の一方に対する侵略的脅威を伴うと認識した場合は、双方は発生した脅威を排除するために、直ちに接触し、協議する。(九条ここまで)

 「接触し協議する」すなわち「相談する」だけなので、防衛協定ではない。特に

 第七条:締約国は、既存の協定に従い、国境地域の軍事分野における信頼を高め、軍事力を相互に削減するための措置をとる。 締約国は、それぞれの安全保障を強化し、地域及び国際安定を強化するため、軍事分野における信頼醸成策を拡大し、深化させる。締約国は、武器及び軍隊の合理的かつ十分な原則に基づき、自国の安全の確保に努める。関連する協定に基づく締約国間の軍事技術協力は、第三国を標的としていない。(七条ここまで)

となっており、「国境地域の軍事分野における信頼を高め、軍事力を相互に削減するための措置をとる」の部分は「昔のような国境紛争はやめましょうね」という、「中露両国は、もう互いに相手と戦争しませんよ」ということを謳っているくらいで、七条の文末にある「第三国を標的としていない」という言葉は、「中露は第三国に対して互いの国を守る軍事同盟は締結していませんよ」ということを意味している。

 すなわち、「中露ともに、相手国のために連携して、第三国と戦うということはしない」ということなので、中露善隣友好協力条約は軍事同盟ではないことが明確に示されている。中露間に確実にあるのは戦略的パートナーシップで、習近平とプーチンの個人的な結びつきが強いということに依存している側面が大きい。

◆中国の秦剛駐米大使が米誌ナショナル・インタレストに「中露は同盟を結ばず」

今年4月18日に、駐アメリカの秦剛(しん・ごう)・中国大使が米誌ナショナル・インタレストに「ウクライナ危機以降」というタイトルの署名入り文章を発表した。その中で秦剛は以下のように書いている。

 ――ソ連解体後、アメリカと中国は1992年にそれぞれロシアのエリツィン大統領の訪問を受け入れ、「互いに(ロシアと)敵対しない」という関係を確立した。当時の米露と中露関係は、同じ地点に立っていたのだ。30年後、中露関係は大きく発展したが、「同盟も結ばなければ、対立もせず、第三者を標的としない」という性質に変化はない。中国はこれまでも、そしてこれからも、独立した大国であり、いかなる外部からの圧力を受けることもなく、事の善悪を自ら判断し、自ら自国の立場を決定していく。(引用ここまで)

 この「同盟を結ばず(中国語で「不結盟」、英語では“non-alliance”)」という言葉だけを取り上げて、日本では「中露関係が後退し、遂に秦剛が、『中露は同盟国でない』と言った」と喜ぶメディアがあるが、上述した経緯を見れば、それが如何に的(まと)外れであるかが分かるだろう。

 5月15日のコラム<ロシア苦戦で習近平の対ロシア戦略は変わったか?――元中国政府高官を直撃取材>にも書いたように、駐ウクライナの高玉生・元中国大使が「ロシアは惨敗する」と言ったことを、「中露関係が後退した」として鬼の首でも取ったように喜ぶジャーナリストがまだいるのは、中露の真相を理解していないためだろう。

◆気を付けた方がいいのは上海協力機構

 前述の秦剛駐米大使は、同じナショナル・インタレストの中で、上海協力機構に関して、以下のように書いている。

 ――1996年、クリントン大統領がデトロイトでNATOの東方拡大のタイムテーブルを初めて発表した年、「中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン」の5ヵ国は上海で「国境地域における軍事分野における信頼強化に関する協定」に署名し、中国と旧ソ連諸国との国境問題を徹底して解決し、中ソ国境100万人兵士布陣の歴史に終止符を打ち、それを以て上海協力機構の礎(いしずえ)とし、相互信頼、相互利益、平等、協議、多様な文明の尊重、共通の発展の原則を確立し、「上海精神」の核を形成した。その結果、中国とロシア、中央アジア諸国との長期的な善隣関係と共通の平和を実現した。 歴史は、異なる選択が異なる「果実」を産むことをわれわれに教えてくれた。(引用ここまで)

 この「上海精神」は、そもそも「NATOの東方拡大に反対」して誕生したようなものであり、そこに今ではインドが入っているということに目を向けなければならない。

 インドが上海協力機構に入ったプロセスは、拙著『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』の「習近平とモディ」による15回以上にわたる辛抱強い中印首脳会談の「果実」の一つなのである。

 今月22日~24日の日程でバイデン大統領が来日し、日米豪印から成る「クワッド」による対中包囲網を、対露包囲網と絡めながら展開させていくようだが、その前に立ち止まって、「中露関係」と「中露印」3ヵ国の実態を把握していく必要があるのではないだろうか(「中露印」3ヵ国が描いている構想に関しては『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』の第六章で詳述した)。

◆EUともNATOとも対立構造にない中国

 中国は北朝鮮と1961年に中朝友好協力相互援助条約という軍事条約を北朝鮮の要求により結ばされた以外は、どの国とも軍事条約を結んでいない。その北朝鮮との軍事条約も、実は中国にとって足枷であり、早くこの足枷から逃れたいと中国は思っている。

 ただ、現在はアメリカの圧力からの緩衝地帯になっているので、それなりの役割を果たしてはいるが、中国は軍事的に危険な北朝鮮と運命を共にしたくないと思っているので、常に北朝鮮の暴走を抑えようとし、関係は微妙だ。

 となると、ロシアと違い、中国は特にEUやNATOと対立する要素は少なく、アメリカがウイグル問題で中国を批判せよと迫ってきたので、その批判をして見せて、中欧投資協定を中断させてしまったが、EUが、「中国がロシアを制裁しない」という理由だけで、対中批判を強めることも考えにくい。

 むしろ、ロシアを制裁することによって経済的に苦しい立場に追い込まれているEUは、いずれ「経済で結びつきを強めようとする中国」の存在が、ありがたくなる可能性が出てこないとも限らない。

 もし、上海協力機構が「NATOの東方拡大に反対して」設立されたのだから、中国はロシアとともに、NATOと対立関係にあると主張すると、上海協力機構の正式メンバー国である「インド」はどうなるのかという矛盾とぶつかる。

 そのことには「目をつぶって、真実を見ないようにしよう」というのが日本にはあるのではないのか。

 日本国民は現実を正視し、バイデンの来日が方向づける日本の未来を、俯瞰的に注意深く読んでいく必要があるだろう。

ロシア苦戦で習近平の対ロシア戦略は変わったか?――元中国政府高官を直撃取材

遠藤誉中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
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今年2月4日に対面で会談した習近平国家主席とプーチン大統領(写真:ロイター/アフロ)

 駐ウクライナの元中国大使の「ロシアは必ず惨敗する」という言葉がネットに拡散したことから、習近平はプーチンを捨てるだろうといった観測が見られる。そこで真相を究めたく、高齢の元中国政府高官を直撃取材した。

◆オンライン・フォーラムで「ロシアは必ず惨敗する」

 中国国際金融30人フォーラム(CIF30)と中国社会科学院国際研究学部がオンライン形式で「ロシア・ウクライナ危機は世界の金融情勢にどのような大きな変化をもたらしたか?それは中国にどのような影響を与えるか?中国はどのように対応すべきか?」をテーマとして、内部フォーラムを開催した。その中の元駐ウクライナ中国大使(2005年~2007年)だった高玉生氏の発言が5月10日にCIF30のウェブサイトに公開されたのだが、彼のスピーチの部分だけが、すぐに削除されてしまった。

 なぜなら、高玉生はそのフォーラムでが「ロシアは必ず惨敗する」という趣旨のスピーチを行ったからだ。しかし、削除された内容が香港系列の鳳凰網や、他の中国内の複数のウェブサイトに転載されたために、海外を含めた多くの人の知るところとなった。

 スピーチの内容は相当に長いので、それをすべて書くわけにはいかないが、概ね以下のようなことを言っている。

1.そもそもソ連崩壊後のロシアは、常に衰退の一途をたどっている。プーチンのリーダーシップの下でロシアが復活したようなことを言っているが、それは全くの虚偽で、ロシアは崩壊前のソ連の衰退を継続しているだけだ。

 2.ロシアの電撃戦の失敗は、既にロシアが敗退したことを意味し、軍事大国などと言いながら、実は1日数億ドルの戦費を負担する財政力などロシアにはない。

3.それでもロシアは会戦当初軍事力と経済力においてウクライナに勝っていたが、ウクライナの抵抗とウクライナに対する西側諸国の巨大で継続的かつ効果的な支援により、ロシアの有利さは相殺された。ウクライナは欧米の連続的な支援により、兵器技術と装備、軍事概念とハイブリッドな戦闘態勢において、ロシアを圧倒している。

4.ロシアが最終的に敗北するのは時間の問題だ。

5.もともとウクライナの世論は親露派と親欧米派に分かれていたが、2014年のロシアによるクリミア併合以降は、親欧米感情が高まった。

6.ウクライナは主権と領土保全の問題でロシアに譲歩するつもりはなく、戦争によりウクライナ東部とクリミアを回復することを決意している。というのも、米国、NATO、欧州連合が、プーチンを打ち負かす決意を繰り返し表明しているからだ。米国は「弱体化し孤立したロシア」を目指す決意を固めている。

7.この目標を達成するために、米国は第二次世界大戦後初めてウクライナのためのレンドリース法を可決した。さらに重要なのは、米国、英国、その他の国々の戦争への直接参加が深まり、その範囲が拡大していることだ。これはロシアが完全敗北して罰せられるまで戦争を続けるという決意の表れだ。

8.ロシアは弱体化し、重要な国際機関から追放される可能性があり、国際的な地位は大幅に低下する。ウクライナはヨーロッパの家族の一員となり、他の旧ソビエト諸国も非ロシア化をする可能性が高い。

9.日本とドイツは、第二次世界大戦の敗戦国であるにもかかわらず、ロシア・ウクライナ紛争を通して軍備開発を加速させ、政治的権力の地位を目指してより積極的に努力し、あたかも戦勝国として衣を換えて西側陣営に入っていく。

10.(ウクライナ戦争後)米国やその他の西側諸国は、国連やその他の重要な国際機関の実質的な改革を積極的に推進する。改革が阻止されれば、新たな組織を設立していく可能性がある。(第二次世界大戦の戦勝国と敗戦国の線引きではなく)いわゆる「民主的で自由なイデオロギー」の国であるか否かという線引きで「ロシアなどの一部の国」を除外する可能性がある。(概要は以上)

 高玉生のスピーチの中で、最も問題となるのは、最後に太文字で示した文言だ。特に「ロシアなどの一部の国」の「など」が、「中国」を指していることは明らかだろう。

 CIF30は何を考えているのか。こんな内容を公開して、削除されない方がおかしいだろう。

◆日本のメディアは「習近平がプーチンを見限ったか?」と大はしゃぎ

 この肝心の「ロシアなど」の「など」があることには目を向けないで、日本のメディアは「中国、党内分裂か」とか「習近平がプーチンを見限ったか?」などと大はしゃぎしている。というのも、情報源としてアメリカの元外交官のデービッド・カウヒグが中国のニュースを英訳してブログで書いた内容を二次情報として用いて、5月12日にNEWSWEEKが<「大国ロシアは過去になる」中国元大使が異例の発言>を発表したので、これは「三次情報」になる。この三次情報では、どこまでが高玉生の発言で、どこまでがデービッド・カウヒグ自身の思惑なのか、さらには、どこがNEWSWEEKの執筆者であるジョン・フェン氏の見解なのかが区別しにくい形で書いてあるため、全体として、あたかも全てが高玉生のスピーチであるかのような印象を与える。

 当然のことながら、日本のメディアは「四次情報」として日本人好みに書いてあるので、「大はしゃぎ」したくなるだろう。幾重にもフィルターが掛かり、結果、「ロシアの苦戦を見て、習近平が遂にプーチンを見捨てた」、「中国、遂に党内分裂か」となってしまったわけだ。

 そうでなくとも筆者としては5月10日のコラム<米CIA長官「習近平はウクライナ戦争で動揺」発言は正しいのか?>で、アメリカが「習近平が動揺している」と言いたくてたまらないため、この方向の世論誘導が成されていると警告したばかりだ。習近平の【軍冷経熱】という対ロシア戦略を直視しないと、日本が外交方針を誤り、日本に不利益をもたらすことを懸念したからである。

◆元中国政府高官を直撃取材_ロシア軍苦戦で習近平の対ロシア戦略は変わったか?

 そこで、もう相当に高齢の、元中国政府高官を直撃取材する決心をした。

 メールは全て検閲されているだろうことは分かっているし、北京のこの古い友人は、私に「しばらくは中国に来ない方が身のためだろう」と忠告してくれた人であり、「いつもデリケートな問題(政治問題)を聞いてくるので、そろそろメールを出すのをやめてくれ」と、言いにくいことを言ってしまった人物でもある。

 それでもと、スマホから連絡したところ、受けてくれた。

 ともかく「ロシア軍苦戦で習近平の対ロシア戦略は変わったか?」、それだけ答えてくれればいいので、教えてくれと、切羽詰まって頼んだ。

 すると、久々の音信に喜び、まるで堰を切ったように、一気に思いを吐き出してくれた。Q&Aの形ではあったが、もう分類するのもまどろこしく、長くもなるので、彼の回答を順不同で羅列する。

一、習近平の対ロシア戦略は微塵も変わらない。そもそも、友人が窮地に陥っているときに見捨てるようなことをしたら、それは必ず本人に跳ね返ってくる。これは人類の原理だ。中露はともに、アメリカによって制裁を受けている国だ。ロシアを支えてこそ、中国の力が温存されるのであり、もしロシアを見捨てたら、それは中国の弱体化にもつながる。中国は絶対に、そのような愚かなことはしない。

二、中国は発展途上国を率いている大国だ。彼らは国連における対露非難決議に関しても、アメリカからの制裁に関しても、中国と同じ立場に立って否定してくれた。だというのに、ロシアが苦戦しているからと言って中国が動揺したら、中国を信じてついてきてくれている発展途上国はどうなるのか。そのような無責任なことをしたら、中国は終わる。したがって習近平の対ロシア戦略は、絶対に揺るがない。

三、ただし、習近平は最初から、ロシアの軍事行動に関して賛同の意を表していない。「反対だ」というストレートな言葉は使ってないが、「賛成ではない」という意思表明は最初からしている。たとえば2月25日、ロシアが軍事侵攻をした翌日に習近平はプーチンと電話会談をしたが、そのときに習近平はプーチンに「話し合いによる解決を」とストレートに言っている。だからこそ2月28日からウクライナとロシアの間の停戦交渉が始まったじゃないか。

四、ゼレンスキーも途中で「NATO加盟を諦める」と表明したので、停戦交渉がまとまり始めたら、突然、アメリカがウクライナに対する激しい軍事支援を始めて、停戦を阻止する方向に動き始めた。アメリカは停戦して欲しくないのだ。ロシアを叩き潰すまで戦いを続けたい。

五、トランプはNATOなど要らないと主張して、NATOを脱退しようとさえした。しかしバイデンは逆だ。NATOを使って世界制覇を続けていたい。バイデンはNATOを使って世界各地で戦争を吹っ掛けていたいのだ。

六、実は中国とウクライナは友好的で、多くの中国人はウクライナが好きで、紛争が始まった最初のころは、ウクライナを応援する人とロシアを応援する人が五分五分だった時期さえある。ところがアメリカが軍事支援を強化し始めてから、中国の民心は突然変わってきた。ウクライナの味方をしているのがアメリカなら、ウクライナもアメリカと同じように中国にとっては「敵」になる。

七、アメリカは自分よりも上に出る国を潰したいという基本的な方針がある、日本だって、かつて半導体は世界一で、アメリカの上を行っていた時期があった。中国人はみんな日本に憧れたものだ。ところがアメリカは、同盟国の日本を、半導体が強いからという理由で叩きのめしたじゃないか。忘れたのか。忘れてないだろう?いま日本の半導体がダメになったのはアメリカのせいで、韓国や台湾が強くなっていった。

八、それと同じことで、アメリカはロシアと中国を潰したいのだ。ロシアの軍事力と中国の経済力を叩きのめしたい。ロシアの次は中国であることを、中国は知っている。しかし忘れないでほしい。中国はロシアではない。ソ連はアメリカの手に乗って滅んだが、中国は滅びなかった。今回も同じだ。中国はそんなに愚かではない。アメリカの手には乗らない。

九、高玉生が何を言ったか、誰も気にしてない。いろんな意見があるのは良いことで、彼の言論もCIF30の公式ウェブサイトから削除されただけで、中国の他のウェブサイトにはいくらでも転載されている。14億人の内の一人が、「ロシアは惨敗する」と言ったからって、それが何だというのか。彼は中央には如何なる力も持っていない退官した高齢の公務員に過ぎない。元ウクライナ大使だからと言って海外が特別視するのは適切でない(筆者注:そう言えば日本にも、高玉生とピッタリ同じく2005年からウクライナ大使になっておられた方もいるようで、たしかに元ウクライナ大使だったからということで特別視するのは適切でないかもしれない)。ただ、高玉生は最後に「ロシアなどいくつかの国が」と、「など」を付けたのは不見識だろう。

十、最後に言っておくが、私自身、ロシアの軍事侵攻には反対だ。賛成していない。バイデンやNATOのやり方は悪辣だが、しかし、それでも、ロシアには他の選択があったはずだ。だからと言って、私はロシアを支援しないわけではない。ロシアが潰されないように支援する。それは中央の姿勢に一致していると私は思っている。

 以上だ。

 なお、高玉生の5番目の発言に関して特別に聞いたが、「あの時期、盛んにアメリカが親欧米派を増やそうと煽っていたことに気が付かない程度の人間だということだ。そういう人はいくらでもいる。気にするな」と切り捨てた。

 長くなりすぎたので、ここまでにしておこう。

ウクライナの次に「餌食」になるのは台湾と日本か?―米政府HPから「台湾独立を支持しない」が消えた!

遠藤誉中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
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バイデン大統領(写真:ロイター/アフロ)

 プーチンを怒らせるには「ウクライナのNATO加盟」を煽ることだったが、北京を怒らせるには「台湾独立」を煽ることだ。台湾が政府として独立を叫べば北京は必ず武力攻撃をしてくる。独立を叫んでくれないと中国が武力攻撃してこない。戦争が永久に地球上で起きていないとアメリカの戦争ビジネスは儲からない。

バイデンはウクライナと同じ構図を、今度は台湾と日本で築こうとしている。

 次にバイデンの餌食になるのは台湾と日本だ!

◆これまでの台湾関係の米政府文書

2022年5月3日付のアメリカ政府のウェブサイトには、台湾との関係のページで、以下の文言があった。( )内の日本語は筆者。

  Government of the People’s Republic of China as the sole legal government of China, acknowledging the Chinese position that there is but one China(一つの中国) and Taiwan is part of China(台湾は中国の一部). The Joint Communique also stated that the people of the United States will maintain cultural, commercial, and other unofficial relations with the people of Taiwan. The American Institute in Taiwan (AIT) is responsible for implementing U.S. policy toward Taiwan.

The United States does not support Taiwan independence(アメリカは台湾の独立を支持しない). Maintaining strong, unofficial relations with Taiwan is a major U.S. goal, in line with the U.S. desire to further peace and stability in Asia.(引用ここまで)

 バイデン大統領が習近平国家主席と電話会談するときも、ブリンケン国務長官が楊潔篪・中央外事工作委员会弁公室主任や王毅外相と会談するときも、必ずと言っていいほど「アメリカは台湾の独立を支持しない」という言葉を、決まり文句のように言っていた。だから、対中包囲網とかいろいろな連盟を結成しても、中国は決して本気で怒ることはなかった。

 台湾政府もまた、政府として「独立」を宣言すると、必ず中国の全人代で2005年に制定された「反国家分裂法」が火を噴くのを知っているので、民進党の蔡英文総統といえども、やはり「独立」を宣言することだけは避けている。

 だというのに、バイデンは今般、ウクライナでプーチンを軍事侵攻に持っていくことに成功したため、同じ手法を用いて、遂にその刃を台湾に、そして結局は日本に向け始めたのである。

◆5月5日の更新で消えた「台湾は中国の一部分」と「アメリカは台湾独立を支持しない」

今年5月5日に更新されたアメリカ政府のウェブサイトにおける台湾関係のページをご覧いただきたい。このページには、以下の二つの文言がない。

     ●Taiwan is part of China

     ●The United States does not support Taiwan independence

 すなわち「台湾は中国の一部」という言葉と「アメリカは台湾の独立を支持しない」という言葉が削除されてしまっているのだ。それでいて

     ●one China

という言葉だけは残っている。これは何を意味しているかといえば、中国は「中華人民共和国」なのか、それとも「中華民国」なのかという違いはあるが、少なくとも「一つの中国」で、アメリカは場合によっては「中国=中華民国」として、「一つの中国」を認める可能性があることを示唆している。

 これが実際行動として起きたら、中国は必ず台湾を武力攻撃するだろう。

 それは「ウクライナはNATOに加盟すべき」と言ってプーチンを激怒させたのと同じことを、習近平に対しても仕向ける可能性を秘めている。

 習近平は本来、台湾を武力攻撃するつもりはない。なぜなら、ウクライナと違い、統一した後に統治しなければならないので、武力攻撃を受けて反中感情が高まっているような台湾国民を抱え込んだら、一党支配体制が崩壊するからだ。したがって経済でがんじがらめにして、搦(から)め取っていこうというのが、習近平の基本戦略だ。

 しかし、バイデンは、それでは困る。

 戦争をしてくれないと、アメリカの戦争ビジネスが儲からない。

 戦争ビジネスで儲けていかないと、やがて中国の経済規模がアメリカを抜くことになるので、それを阻止するためにもバイデンには「戦争」が必要なのである。

◆中国は激しく反応

5月10日の18:24に公開された中国外交部のウェブサイトによれば、定例記者会見で、ロイター社の記者が趙立堅報道官に以下のように聞いている。

 ――アメリカ国務省のウェブサイトが最近「米台関係に関する事実のリスト」を更新し、「台湾は中国の一部である」や「米国は「台湾の独立」を支持していない」などの表現を削除したと、多くの報道が注目している。これに関して外交部はどのように考えているか?

 すると、趙立堅が眉間にしわを寄せて、概ね以下のように回答した(概略)。

――世界に中国は1つしかなく、台湾は中国の領土の不可分の一部であり、中華人民共和国政府は全中国を代表する唯一の合法的な政府だ。 これは国際社会が普遍的に認める共通認識で、国際関係の原則だ。歴史を改ざんすることは許されない。アメリカは、3つの米中共同コミュニケにおいて、台湾問題と「一つの中国」原則について、厳粛な約束をした。今になってアメリカが米台関係を改定することは、危険な火遊びをするようなもので、必ず大やけどをすることになる。

 バイデン大統領は何度も「アメリカは台湾の独立を支持しない」と誓ったではないか。それを言葉通りに実行せよ。台湾問題を口実に政治的小細工を弄して、「台湾を以て中国をコントロールする」ような愚かな行為はやめることだ。(引用ここまで)

 5月11日06:47には、中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」が外交部のコメントを引用して激しい批判を展開している。そこでは

 ●2018年8月31日にアメリカ国務省の東アジア局が更新したウェブサイトには、「米国は、中華人民共和国政府が中国唯一の合法的な政府であることを認め台湾は中国の一部であり、米国は台湾の独立を支持しておらず、台湾との強い非公式な関係を維持することは米国の主要な目標であり、アジアにおける平和と安定の追求に対する米国の期待に合致している」と書いてあるが、それは今アーカイブ入りしてしまった。

 ●5月5日に更新されたヴァージョンでは、厳粛な中台間の約束事が削除され、「台湾は民主主義のリーダーであり、科学技術の要人であり、インド・太平洋地域における米国の重要なパートナーである」と書いてある。

 ●「台湾カード」を用いて、卑劣な小細工を弄することは絶対に許されない。

という趣旨のことが書いてある。

 さらに5月11日15:41、中共中央台湾工作弁公室と国務院台湾工作弁公室は同時に記者会見を開いて以下のようにアメリカを批判した。

 ――「台湾が中国の一部である」という事実を変えることはできない。 米政府に対し、「一つの中国」原則を空洞化させることをやめ、「一つの中国」原則と三つの米中コミュニケを遵守するよう要求する。

◆台湾のネット番組は

台湾のネット番組【頭條開講】が【台湾海峡は煉獄になったのか? ホワイトハウスはどうしても北京を怒らせたい(北京を怒らせるためには手段を択ばない)! 文字によるゲームは中国のレッドラインに挑戦しようとしている! 「台湾の独立を支持するか否か」がカードになってしまった! アメリカはかつての承諾を覆そうとしている!】といった、やたら長いタイトルの番組を報道した。

 コメントしているのは、元ニュージーランドの「中華民国」代表(大使級)の介文汲氏で、彼はアメリカの今般の台湾に関する変化を「戦争に誘うため」と解釈している。

 【頭條開講】は台湾の「中天新聞」傘下のニュースチャンネルで、国民党側のメディアだ。そのため中天新聞は民進党の蔡英文政権からテレビ局としての運営許可を2020年11月に取り上げられ、今のところはYouTubeチャンネルを運営している。その上でご紹介すると、介氏は概ね以下のように言っている

 ●これはほんの始まりに過ぎない。フルコースの料理で言うなら、前菜が出たといったところか。

 ●今は当該文章を削除しただけだが、そのうち明確に「台湾は中国の一部ではない」と書いてくるかもしれないし、「アメリカは台湾の独立を支持する」と明言するようになるかもしれない。

 ●そこまで行ったら、当然、戦争が始まる。

 ●そもそも、考えてみるといい。アメリカがちょっとした策を講じただけで、ロシアは見事に引っ掛かって手を出してしまったじゃないか。今度は似たような手で「台湾」を道具に使って中国に戦争を誘発させようとしている。GDP1.7兆ドルのロシアと比べたら、何と言っても中国はGDP17兆ドル!アメリカにしてみれば、この中国こそが本当の敵なんだ。

 ●アメリカにとっては、台湾海峡での緊張が高まれば高まるほど有利で、その分だけアメリカの懐にお金が転がりこむという寸法だ。

 ●アメリカは大臣クラスの人が台湾を訪問したり台湾に武器を売りつけたりして、できるだけ北京を怒らせ、台湾海峡の緊張を高めて、戦争に持っていこうと準備している。

 ●だから、台湾人自身が、自分たちの未来を、どのようにして決定し、どういう道を選ぶのかを考えなければならない。

◆ウクライナの次に「バイデンの餌食」になるのは日本か

 ウクライナ戦争をきっかけに、日本は軍備増強への意向が強くなっている。その方向に日本人の意識を醸成した上で、アメリカは「日本をNATOに加盟させる」雰囲気をちらつかせて、「餌」にしている。

 こうしておいて「台湾独立」という北京が激怒する「台湾カード」を用いて、武力を使って台湾統一をすることを避けようとしてきた北京を何とか怒らせ、武力を使わざるを得ない方向に持っていこうとしているのだ。

 これはミアシャイマーが「棒で熊(プーチン)の目を突いた」ことに相当する。   

 ウクライナの場合は「NATO加盟」を煽ればプーチンは動くと、バイデンは2009年から周到に計画して行動してきたことは、これまで何度も書いてきた通りだ(拙著『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』だけでなく、たとえば5月1日のコラム<2014年、ウクライナにアメリカの傀儡政権を樹立させたバイデンと「クッキーを配るヌーランド」>や5月6日のコラム<遂につかんだ「バイデンの動かぬ証拠」――2014年ウクライナ親露政権打倒の首謀者>など)。

 結果、獰猛なプーチンは愚かにもその手に乗って軍事行動に出てしまった。

 北京の場合は「台湾独立」が中華人民共和国誕生以来の「最大の怒り」となることをバイデンは知っている。習近平が「反国家分裂法」を発動して台湾を武力攻撃するしかないところに追い込まれるかもしれない。

 その場合、アメリカ人は戦わないで、「台湾有事は日本有事」という概念を日本人に刷り込み、「アメリカは遥か離れた所にあるが、日本は台湾のすぐ隣なのだから、さらに尖閣問題だってあるから、これは日本の問題だ」として、「戦うべきは日本人」と主張し、日本国民を戦場に駆り立てる可能性がある。尖閣に関しては日米同盟が対象としていると言っているが、中国は尖閣を狙って武力攻撃をするわけではないのでアメリカは回避する理由を見つけられるし、また日米安保条約も、米議会の承諾がなければ米軍を動かせないので、そこで否決すれば済むことだ。

 戦費も日本が出しなさいと、金を日本からむしり取ることもするだろう。

 アメリカにとって、日本人の命が犠牲になることは「痛くない」のだ。アメリカの言う通りに動くことに、日本は慣らされてきたので文句は言うまいと高を括っているだろう。1945年8月15日以来、その方向に日本を手なづけてきたのだから。

 筆者がなぜ執拗にバイデンの動きを追いかけてきたかというと、実はこれがバイデンの行きつくところであろうことを最初から予感していたからだ。

 従って、「遂に来たか」という思いしかない。

 1945年からアメリカに飼いならされてきた(少なからぬ)日本人には到底信じられない「妄想」のように見えるかもしれないが、これが現実だ。嘘と思うならアメリカ政府のウェブサイトをしっかりご覧になるといい。

 ウクライナで起きたことは。必ず日本でも起きる。

 それをどのようにすれば防ぐことができるのかを考えることこそ、日本人の責務なのではないだろうか。

 追記:台湾関係の文言削除は、ただ単に対中包囲網を強化しているだけではないのかという疑問が湧くかもしれないが、もしそうなら、米通商代表部(USTR)が対中制裁を一部解除し始めたことと矛盾する。対中包囲網の強化だけが目的なら、何も最も戦争を誘発する手段を使う必要はなく、他にいくらでも方法があるはずだ。

太陽系は約46億年前、銀河系(天の川銀河)の中心から約26,000光年離れた、オリオン腕の中に位置。_b0415549_14324422.jpg
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